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2020.03.02 春の来ない街
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可愛そうな春が遠くで佇んでいる
むかし何処かで見たあの娘のように
別れを惜しむ間もなく
喜びを噛みしめる間もなく
降り注ぐ日差しと暖かい風の中で
不安な春が泪を地に落としている

冬の野を越えやっとたどり着いたのに
一瞥もされないあの娘のように
再会を誓う間もなく
出会いに胸を踊らせる間もなく
色褪せた桜色のコートを手に持ったまま
寂しい春が叶わぬ夢を歌っている

こんなに寂しいお前を見たのは初めてのこと
待ち人のない娘の固く結ばれた唇のように
思い出に浸る間もなく
明日の希望に駆け出す間もなく
ひとりぼっちの時の重さに耐えかねて
行き場のない春が黙って目を伏せている

なんて切ない春の横顔だろうか
俯いて去って行ったあの娘のように
語る間もなく
語らざる間もなく
誰からも見向きもされない美しい春が
愛されるべきはずの春がさよならと手を振った

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雪が降ると死んだ奴らを思い出す
粉雪の白いスクリーンに映る在りし日の姿が
優しく出来なかったあの日のことが
切ない悔恨の思いを連れてやってくる
故郷に置き去りにしてきた
返せない愛情の白さほど胸が痛いことはない

雪が降ると言えなかった言葉を思い出す
粉雪の波間に心が揺らされ漂いながら
些細なことで争ったあの夜のことが
言えなかったゴメンを連れてやってくる
もう聴く人もいない故郷の街
届かない声の寒さほどやり場のない想いはない

雪が降ると再会の約束を思い出す
粉雪のように儚く舞い落ちる時間に追われて
共に生きた時代の残り香が
寂しさと温かさを連れてやってくる
だけど何故か悲しくはない
粉雪の白いスクリーンが若き日を映し出すから

2020.01.28 猫の師匠
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我が家の猫は僕の師匠
自分の存在を疑うことをしない
何事にも問いを立てることなく
どんな答えも用意する必要がない
だから彼は苦悩する必要もなく
不安に怯えることもなく
何かを乗り越える必要もない

我が家の猫は僕の師匠
答え続ける一生を否定する
何事もありのままに受け入れ
与えられたものを愛することが出来る
だから彼は思考することもなく
知識に惑わされることもなく
立派である必要もない

我が家の猫は僕の師匠
生きることを説明したりしない
問い続ける僕の傍らで静かに眠り
愚かな弟子に無言の智慧を授けてくれる
だから彼は僕の大切な師匠
むかし胸の中で震えていた仔猫が
生きることのすべてを教えてくれた

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風に言葉を書き続けてきた
形にも残らず書店にも並ばない言葉を
いま目の前で生きている仲間と
いま目の前でそれを観てくれる人だけで
僕たちしか知らない人生を生きようと思った

記憶の中の本棚には涙と汗と笑顔がしまってある
いつか懐かしく思い出すこともあるだろう
だけどその思い出す人もやがて風になるだろう
憶えていることも幸せだけど
忘れられることも幸せなのかも知れない

本当に大切なものは今でしか伝えられない
僕たちしか知らないこの瞬間には真実だけがある
風に書いた言葉だけに生命は宿る
過去の遺物にも未来の想像の中にもそれはない
振り返らず追う必要も無い美しい生命の輝きがある

何かを残すことだけに囚われれば言葉は濁る
風のように生まれ消え去るところに伝えるべきものがある
僕たちしか知らない幸せは僕たちだけのもの
だから今日も風に言葉を書き続けている
そして風のように忘れ去られたい

2019.12.29 新しい時代
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昭和は足し算
平成は掛け算
令和は引き算を覚えよう
便利さには幻覚作用がある
果てしない欲望は楽をしたせい
使えば身は痩せ細り心もやがて朽ち果てる

昭和は足し算
平成は掛け算
令和は引き算を覚えよう
いらない物をどんどん捨てよう
不自由なのは持ち過ぎたせい
心に付いた贅肉は優しい心を鈍らせる

昭和は足し算
平成は掛け算
令和は引き算を覚えよう
ごちそうさまと箸を置こう
未来を食べ尽くしてしまうから
ひとつの物を分け合う美しい世界が来るように

昭和は足し算
平成は掛け算
令和は引き算を覚えよう
無限の迷路に惑わないように
金色の壁だらけの街を抜けだそう
今日という足元に咲く花を見つけるために