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2018.05.16 カタチ
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カタチの無いものを信じる力をください
カタチにすがるこの手を叱ってください
僕たちはカタチないもので出来ているのに
カタチのないものを信じられないのです
自分自身の命を信じられないから
僕たちはカタチを手に入れる為に追うのでしょうか
手に入れたカタチはやがて失うカタチなのに
追わなければ不安に押しつぶされてしまいそうなのです
カタチのないものを信じることが来るなら
僕たちはもう何処にも行かず探しまわりもしないのに
朝を告げる目覚まし時計がカタチを連れてくる
コーヒーをすする度にカタチは近づいてくる
戦闘服に着替えた鏡の中の別人がカタチという銃を持ってくる
満員電車の四角い鉄のカタチに押し込まれて
僕というカタチは歪んでため息をつく
巣箱のような細長い建物はカタチをつくる工場だ
僕というカタチは奇妙なカタチを産む機械
目眩がするほど同じカタチが世界にあふれてゆく
そのカタチを買うためにカタチを売りカタチをつくる
手に入れた薄い紙と丸い金属は誰もが欲しがる究極のカタチ
でも本当に欲しいものはカタチではない
だからカタチのないものを信じる力をください
どうかこの工場から退職させてください
退職祝いも退職金もいりませんから
花束も拍手もいりませんから
カタチのないものを信じる力を僕にください

2018.05.13 痛い花
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母の日に母のない子の涙雨
トタン屋根に落ちる寂しいリズム
軒下の雲雀の子の鳴き声に
親雲雀が優しく答える午後3時
母のなかった生涯はいま何時の鐘を打つ

幾度も焦がれて打ちひしがれて
母の手の温もりも匂いも知らぬまま
時は流れて雨だれを聴く
雲雀の子の嫉妬して
タバコの煙にため息を隠す誰かの息子

母の日の雨だれの音を聴きながら
母のない子は安堵する
花屋の売り子の口上を聞かずに済んだから
赤いカーネーションは赤より恨めしく
胸に飾られた白いカーネーションは白より痛かった

2018.04.18 人と人間
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人から人間になれるようにと
新しい制服を着た生徒が重い鞄を背負って歩く
好むと好まざるとに関わらず
生きるカタチを教え込まれるために

人から人間に向かう道には迷いと葛藤ばかり
でもその苦しみが何なのかを皆知らない
やがて木々は葉を落とされ枝を削がれ切り倒される
人であった記憶を消し去るために

蝶も舞わず鳥も鳴かない冷たい世界に
やがてステンレスの柱が立つだろう
森は消え去り人間は人であったことを忘れる
システムが何もかも解決してくれると信じて

けれど痛みは心の底から消えはしない
人であった僅かな記憶が根のように残っているから
人間である前に人であれと血液が叫ぶ
与えられた天秤ばかりを疑えと太古の記憶が叫ぶ

人から人間になれるようにと出来た教科書
新しい制服を着て重い鞄を背負う生徒たち
人間にされる前に人であることを忘れてはならない
教科書に悪戯書きしながら話は半分聞くが良い

人間になるための作法を教え込まれたなら
人に戻るために自分で学び直しなさい
終わらない苦しみの正体を知りなさい
人であった時代の優しさが自分を責めることを

2018.04.09 余白
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この窮屈な世界に余白を取り戻せ
義務も権利も無い自由な余白を取り戻せ
愛の生きる場所は余白の上にある
どんなに立派な決めごとで世界を埋め尽くしても
そこに愛を使う場所は無い

この窮屈な世界に余白を取り戻せ
差別も貧富の差も無い余白を取り戻せ
愛が生まれる場所は余白の上にある
埋め尽くされた注意書きの上に愛は咲かない
そこに愛のいる場所は無い

この窮屈な世界に余白を取り戻せ
優しさと思いやりが座る椅子を取り戻せ
愛の種は余白の大地に蒔かれる
埋め尽くされた文字を消して愛を植えなさい
世界に愛と余白を取り戻しなさい

2018.03.18 ミツバチ
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君は早く大人になりすぎた
誰も気づかないことに
みんな気づいてしまうから
自分の中の幼さに責められて
葛藤と苦しさを抱えてしまった少女
さあ野原で遊びなさい
無力さに翻弄された心の叫びを
我が儘だと決めつける大人など放っといて
花々を巡るミツバチになりなさい

巣箱の中は寂しいだろうか
しかし太陽はまぶしすぎるだろうか
堅くなってしまった心に
出ておいでと誘う声は届くだろうか
それともうつむいて唇をかみしめ
空しく寂しく微笑むだろうか
早く大人になりすぎた少女
何でも気づいてしまう感性の殉教者
自分だけの蜜を集めて飛びなさい

野原の上を旅しなさい
決して高くは飛べないだろうけど
美しい花の香りは君を包むだろう
慎ましく生きる者だけが知る生命の薫りが
早く大人になりすぎた少女
戯れの季節を取り戻すために
君が背負った大人を脱ぎ捨てなさい
通り過ぎてしまった君の春を取り戻して
やがて僕の手からも飛び立ちなさい