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2009.08.19 苦い定食
苦い定食

四角いテーブルに
家族が座る

少女の鼻先に置かれた
かけそばの湯気が
冷める頃

一家団欒の光景に
親の顔は見えない

そこには
食事に夢中の二人の男女と
食べ盛りの
野球帽をかぶった少年がいるだけだ

店の片隅に見える
子ども用の座の高い椅子は
出番を逃して寂しく笑う

少女は立ったまま
冷めたかけそばを
すする

しかし
誰も少女を見ない

家族の目は
寂しいサンマの塩焼きと
他人行儀な豚汁を見ている

少女は
家族を見ている

しかし
少女を見る者はいない

テーブルの下で背伸びする
幼い足と赤い靴が
痛々しくさえ思える

僕を見つめる
少女の視線に包まれて
僕は苦い定食を食う

遙か山の向こうの
茜雲の美しさを眺めては

苦い定食を食う

暮れてゆくのは
少女の心のように真っ赤な
背伸びする赤い靴だ

家族のたてる
箸と食器の音だけが
夕暮れの定食屋の店内に
響いていた

1日の終わりの
苦い定食





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