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冬の釣り師と桜の木

冬の釣り師は
春を待ちわびる

雪解け水の
春の奔流にて
己の生を感じる為だ

どれだけの川を訪ねたことだろう

釣り糸を垂らし
どれだけの自分を
見つめ直せただろうか

ひとけのない山の奥にも
春は公平にやってくる

深山の桜は
賞賛されることもなく
誰に見上げられるでもない

しかし彼女は
さぼりもせずに
そこにしっかりと立ち
花を咲かせている

煌めく川の中に立って
その桜を見ていたのは
20代の頃だった

木立の影の暗い淵で
永遠の巡礼を繰り返す
捨てきれない煩悩のような
枯れ葉が
くるり
くるりと回っていた

僕たちは
深山の桜のように
誰も見ていない場所でさえ
さぼらずに咲くことが出来るだろうか

春を待つ釣り師の心に
一本の桜の木が
永遠に問いかけている

僕が春と呼ぶ季節は
あの桜に出会った日の
今はなき
遠い春のことだ。





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