2018.02.01 優しい定食
a0001_000559_convert_20180201135314.jpg

定食屋の小さなテーブルに座ると
すぐ隣におばあさんが後を追うように腰掛けた
店員に定食を注文していると横から
同じ物をお願いしますと声が聞こえた

何処がいいのか迷っていたけど
兄ちゃんがこの店に入ったから真似したよ
何が美味しいのか分からないからそれも真似させてね
おばあさんはそう言うと笑いながら話し始めた

年寄り夫婦二人じゃ食事はほとんど作らない
お昼は毎日外食だから飽きちゃってね
何が出てくるか知らないけど私は好き嫌いがないから
おばあさんはそう言うとまた笑った

この歳になるともう何の楽しみもない
孫の成長だけが楽しみでね
生きていてもしょうがないんだけど
おばあさんはそう言って口を押さえながら笑った

もう死のうかと思うこともあるけれど
部屋が片づいてなかったらみっともないから死ねないしね
それでなんとなく生きているよ
おばあさんはそう言って今度は静かに笑った

やがて定食が同時に運ばれてきた
おばあさんは唐揚げとチキンカツの量に驚いて
これは美味しそうだねと喜んだ
ここの定食はボリュームが凄いんだよと僕は笑った

おばあさんは初めての店に少し戸惑っていた
はいこれはおしぼりね
これはふりかけだから自由に食べていいんです
僕は説明しながら少し照れながら笑った

そしてこっちがソースでこれは辛子
サラダにはこのドレッシングをかけて
皿のおろしポン酢は唐揚げを付けて食べるんです
店員と目が合ったので頷いて笑って見せた

おばあさんは隣で何度も同じ言葉を呟いた
兄ちゃんありがとう優しいね
何度も何度も呟いて頭を下げた
僕とおばあさんはそのとき一緒に笑った

食べ終わると僕はコーヒーを飲み
おばあさんはお茶をすすった
僕とおばあさんはお会計も一緒に済ませて店を出る
二人は心を洗うような白い雪を見上げてまた笑った

スポンサーサイト