FC2ブログ
a0001_000356_convert_20161201104339.jpg

夜の凍てつく路上の片隅に
膝を立てて座っているお爺さんがいた
一度通り過ぎた僕は気になって道を引き返した
「どうしたのですか?」そう声をかけると
お爺さんは酒を飲み過ぎで歩けないと言う

何台もの車やバイクが通り過ぎたのに
誰も立ち止まろうとはしなかったのだろう
冷たくなった手を痛そうにさすっていた
お爺さんは「また 女房叱られる」と呟いた
それから夜空を見上げて鼻をすすった

お爺さんが凍えてしまう前にパトカーを呼んだ
警察は着くまでそこに居てくださいと云う
「もうすぐ無料のタクシーが来るからね」
そう告げるとお爺さんは安心した
やがてお爺さんは様々なことを話し出した

お爺さんの家は近所だということ
日本酒が好きだということ
飲み過ぎてもう歩けないということ
自分は80歳であるということ
そして女房に叱られるということ

やがて赤色灯をつけた無料のタクシーが来た
お爺さんは「ご親切にありがとう」と言った
そして「また 女房に叱られる」と呟いた
やがて無料のタクシーは静かに動き出した
「また 女房に叱られる」その言葉だけが耳に残った

スポンサーサイト