FC2ブログ
2012.07.24
P1110114_convert_20120724161915.jpg

寺の境内に佇む男女
女は男に背を向けて日陰に急ぐ
男は案内のしおりを手に
呆然と女の歩き去る後ろ姿を見ている

女はタオルを頭に乗せ
顔をしかめて不機嫌そうに
僕の横を通り過ぎた
不満そうな態度を唇に滲ませて

男は戸惑いながら
女の向かった日陰のベンチを見ている
その手には案内のしおりが痛々しく握られ
肩を落とした男の頭に太陽が容赦なく照りつけている

暑いから歩きたくない
あなたがひとりで観てきてよ
女の言葉が蝉の声にかき消された頃
男は諦めたように伽藍へと向かった

重い足取りで炎天下の中を歩き
やがて風の吹きすぎる回廊の中へ
男の心にはどこか欠けてしまった想い出が刻まれる
二人で訪ねた寺の中をひとりで歩く寂しい男

その帰り道に鉢に入った蓮を見た
今にも散りそうな花びらを抱えた蓮を見た
ひとつの世界で寄り添う花びらが
思いやる心の足りなさをそっと僕に教えてくれた


スポンサーサイト