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僕はサイゴンに着くと両替所を目指した。
この国の通貨はドンであるが、見たことも聞いたこともない単位だった。
100円で約20,000ドンに両替できるのだが、何しろ0が多すぎて訳が分からない。
ちなみにドルも使えるし、一部では円も使えるのだが、安く買い物をしようと思えば、
このドンが一番有効なのだ。
土産物屋に立ち寄ると200,000ドンなどと書いてある。
これを見ると何故だか買う気が失せてしまう。
よく計算すれば1000円程度のものなのだが、20万という響きに何故かビビってしまうのだ。
この0の多さには最後まで慣れなかった。
ユーロやドルやらバーツやらにはすぐに慣れたのだが、札を見ると0が何個あるか分からなくなる。

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サイゴンの物価にはおおよそ定価などというものはない。
すべてが言い値で決まってしまうから、同じものが半値などということは普通に起きてしまう。
それに市場で売られている商品には怪しい物も多く、盗品やら横流しの品もあるし、
警察も袖の下を貰わなければ何もしてくれない。
驚愕なのは有名ブランドのリュックが400円程度で買えてしまうこと。
どう見ても作りも良い感じで偽物には見えない。
恐らくこれは盗○か、横○しの品かも知れないので手を出すのをやめた。
また、市場や街中では日本語でよく話しかけられる。
「オニイサン・バイク・ノラナイ?」とか、「ナニホシイデスカ?」とか、
日本人と見るや、寝ている売り子までもが飛び起きて寄ってくる。
こんな状況を観ていると、ここでも日本人はよほど良いお客さんなのだろうと思った。
西洋人やアラブ系の観光客も多いのだが、そこまでしつこくされていない様子だった。
まあ、僕のような貧乏人もいることを彼らは知らないから、
日本人=お金持ちと思いこんでいるのだろう。

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夜の7時になるとベンタイン市場の横のストリートでは連日、ナイトマーケットが開かれる。
そのマーケットを待ちながら屋台でビールを飲んでいると突然大騒ぎが起こり、
凄まじい勢いでテーブルもイスも一斉に片付けられた。
唖然としながらビールを片手に立ちすくんでいると、兵士を大勢乗せた軍のトラックが路上に現れた。
僕がおっちゃんに「POLICE?」と聞くと、おっちゃんは大笑いしながら頷いていた。
よく分からないが軍の夜回りだろうか?そんなハプニングが終わると、
まるで祭りの山車でも引くように凄い数のテントが移動を開始しながら一斉に路上へ出てくる。
ナイトマーケットが今まさに始まろうとしていた。
その熱気と、たくましく生きる彼らの日常を僕は黙って眺めていた。

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その帰り道で、盲目の老人がひとりで歩道を歩いているのを見かけた。
普通の人間でも命を落としそうなバイクの群れの中を渡り、
ガタガタの不親切な歩道に杖をあてがい歩いていた。
サイゴンの歩道は日本のような環境ではなく、大量のバイクと屋台の人群れで溢れているし、
歩道でもお構いなしにバイクが通行している。
老人が行き場を失うと、近くの人が手を引いて助けてあげていた。
無法地帯に見えるこの街にも人を思いやる心があることに嬉しくなった。
老人は片手に数本のペンを握り、片手に杖を持っている。
そう、この老人はペンを買ってくれる人を求めてこんな危険な街を彷徨っているのだ。
僕は振り返って老人の手に僅かばかりの紙幣を握らせてその場を去った。

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路上では更に増え出したバイクの群れが切れ間なく続いている。
ちなみに、ベトナムではバイクを「HONDA」と呼ぶ。
何処のメーカーだろうが、HONDAと言えばそのままバイクを指すのだ。
統計によれば毎日約30人ほどが事故で亡くなるらしい。
ひき逃げも当て逃げも日常茶飯事だし、何しろ50CCなら免許もいらない。
事故になっても保険もないし、保証もないし、警察も動かない。
もし観光客がサイゴンでバイクに轢かれたら、轢かれ損であるばかりではなく、
外国で病院に行って治療することも、痛みをこらえることもすべて自己責任になってしまう。
時には治療費が数千万円ということもあるらしいから自前で旅行保険は絶対に掛けなければならない。
まあ、気軽にショッピングなどを楽しみたい人にはベトナムはお勧めできない。
ここには常に危険が隣り合わせている。
自分の気持ちを戦闘モードに切り替えなければたちまち被害者になってしまうだろう。

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もし読者の方がサイゴンに行く場合に注意して欲しいのが食である。
まず、水は飲めないのでミネラルウォーターが必需品だし、氷入りの飲み物も避けるべきだ。
無事に旅を続けたければ屋台の料理は食べない方が無難だろう。
僕は自分でも屋台の下を確認したのだが、汚れたバケツの水で食器を洗っているし、
その水そのものがしこたま汚染されているのは事実であった。
ちなみに、サイゴンハウスという料理屋はブッシュ大統領も訪れたレストランだが、
二人でビールを飲んで色々食べても日本円で2000円程度とい物価の安さだから、
そのようなレストランでベトナム料理やフランス料理を食うのが安全だろう。
ベトナムの屋台の衛生状態は劣悪で、バンコクや台湾の屋台などはまだ良い方だろうな。
サイゴンの人と日本の人では、全然お腹の耐性が違うから気をつけなければすぐに下痢・・・となるだろう。
ちなみにここでは朝飯を家で食べる習慣がないらしく、みんな外で食べている。
歩道にプラスチックのイスを並べて何やら怪しい食事とコーヒーを飲んでいるのだ。
どのようなシステムなのかは知らないが、至る所でそんな光景が見られる。

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まあ、ここでは隣近所の人との付き合いが希薄になるというようなこととは無縁だろう。
しかし日本はどうだろうか?
親切とか、思いやりとかもお金で買う時代に来てはいないだろうか。
人との関わりの希薄さや精神の貧困が、新しいビジネスを生んでいるように思えるのは僕だけだろうか。
心が為すべき仕事を、業者が代わりにやってくれるようなシステムは「心の貧困」の表れではないか。
裕福になる度に日本人は何を犠牲にしてきたのだろう。
日本人は経済成長という豊かさ以前に、優しさや思いやりという豊かな心を持っている国民だ。
世界一の技術よりも誇れるものを僕たちは持っているはずだ。
サイゴンの片隅で、僕はその当事者である自分にそのことを問い直さねばならないと思った。
まあ、そんな壮大なことよりも、飲んだくれの自分を正すべきかな?


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