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海の男達が一本釣りする甲板は
奈落への先端のような静けさに満ちている
長い航海を終えて戻ってきた男達は
収穫を地下の冷凍室から引き上げている

僕はその活気にみなぎる船の上を歩く
日に焼けた顔と深く刻まれた皺の強靱な掌を
通りすがる度に感じながら
僕の知らない恐ろしい波頭を思う

静粛に包まれ安堵した操舵室
男達のつかの間の疲れを癒した狭い風呂
巨大な鉄の棒のような回転する船の心臓部
長い月日の波間で身を横たえた窮屈なベッド

薄暗い食堂の確かな賑わいの感情
料理人が腕をふるったであろう静かな調理場
ここは男だけが集う辺境の浮島
恋人を想い家族を想う優しい男達の仕事場

僕は知りもしない大海原の闇に怯え
波間の枯れ葉の気持ちを察する
カレンダーに刻まれた×印を凝視しながら
僕は男達のたったひとつだけの願いを知る

愛しい陸に帰りたい
愛しい恋人の元に帰りたい
愛しい家族のいる家に帰りたい
強い男達の見る夢はとてもシンプルだ

陸を彷徨う詩人は
少しばかりの肩身の狭さにうつむく
そして冬の港の熱気を横目で眺めながら
行くあてもない長い冬の旅路へと歩き出す






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