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2010.08.11 波間にて
波間を沖へと泳いでゆく
見えるのは波頭と空と太陽
腕が水を捉え
足が水を押し返したとき
自らに宿る生命を感じる

しかしここには音がない
鼓膜の奥には自分の心臓の音が響いている
他には何も音がしない

波間を沖へと泳いでゆく
水は冷たく海底には流れを感じる
目頭に塩を感じ
唇に苦さを感じながら
そうして僕は生命を実感する

しかしここには音がない
鼓膜の奥に誰かの心臓の音が響いている
あれは顔も知らない母の鼓動

波間を沖へと泳いでゆく
温かな羊水の海の水平線から
大声で誕生を叫び
僕は母の手に抱かれる
僅かばかりの拍手を纏って

しかし僕が大人になる頃
あなたは遠い街へと旅立った
この海の彼方には母の住む国があるだろうか




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