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深い渓谷の一本橋
僕はこの場所に座って
橋の向こう側を眺めている

ある者はちらりとこちらを覗いて立ち去る

ある者は一歩踏み出して尻込みをする

ある者は橋の真ん中から飛び降りる

またある者は手の届くところまで来て息絶える

深い渓谷の一本橋は
寂しくて居心地がよい
ここには何もなく全てがある

僕はその向こうにあるものを知っている

僕はその向こうの耳の聞こえない住人を知っている

僕はその向こうの目の見えない住人を知っている

僕はその向こうの口のきけない住人を知っている

深い渓谷の一本橋
そこで僕は手紙を書いている
しかしその手紙に宛名はない

昨日もこの橋を渡ってくる者はいなかった

今日もこの橋を渡ってくる者はいない

明日もこの橋を渡ってくる者はいないだろう

しかし命が尽きるまでに僕は君に会いたい

深い渓谷の一本橋
僕はここで待っている
僕はここから何処へも行かない

深い渓谷の一本橋
僕はここで待っている
君が来る日のためにウイスキーを買って

封を切らずに待っている
グラスを2つ持って
君と乾杯する日のために

君はいまどこにいるのですか
この一本橋のある場所を
風に訊いてみてください

そして会いに来てください


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