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もうだいぶ前の話だが、年末の金沢を旅していたときのことだ。
観光地へ向かう為に僕はバスターミナルの待合室にいた。
外は冬の雲が重くたれ込めとても寒い日だった。
椅子に腰を下ろしているとひとりのオヤジが話しかけてきた。
「旅行かい?」
「ええ、ふらりとね」
「何処に行くんだい?」
「少し市内を見てから帰るんだ」
「そうかい、金沢は初めてかい?」
「いや、前にも来たことがある」
「何処が一番良かった?」
そんな他愛のない会話が続いた後で、彼はおもむろに切り出した。
「年末が過ごせそうにないんだ」
「ん?」
「少しでいいから、恵んでくれないかなあ、お兄ちゃん」
「そうかい。こっちも旅の終わりでからっけつなんだが」
「出来れば、何とかならないかなあ」
僕は、財布から千円札を出して彼に渡した。
「感謝するよ、お兄ちゃん」
「まあ、とにかく弁当でも買いなよ」
彼は、金を受け取ると足早にバスターミナルを出て行った。
やがてバスが到着し僕はそのバスに乗った。
バスの車内からコンビニの店内が見えた。
さっきのオヤジが弁当手にレジに並んでいる姿が見えた。
真冬の金沢に雪が舞う頃、僕とオヤジの人生も少しだけ重なっていたのだ。
施す側と、施される側、そんな関係以外に二人の出会いはなかったかのか?
などとぼんやり考えていた。
もうすぐ新しい年が明ける。
詩人にも、そしてホームレスのオヤジにも。



















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