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2011.05.27 海と少年
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大海原に並んだ二艘の舟
こちらの舟からあちらの舟へ
少年達は海を飛び越え乗り移る

先に渡った少年が手を差し出す
相手を思う優しい心
互いの手が結ばれる瞬間
海の男は大声で叫んだ

手を貸してはいけない

海の男は優しい眼差しで
少年の顔をしっかりと見た
瞳の奥の深海には
優しさと厳しさに似た色がある

少年は海の男に尋ねる
不意を突ついたその台詞に
目を丸くしながら
そしてしっかりとした眉で

どうして助けてはいけないのですか

並んだ二艘の舟を隔てて
二人の少年が向き合ったまま
心地よい風と緊張に吹かれている
そして海の男は言った

他人を頼れば心に油断が出来る
油断が出来ればミスをする
ミスをすれば助ける者も助けられる者も
一緒に海に落ちて死ぬだろう
海とはそういう場所なのだよ

夕日が眩しく水平線を照らし
その長い旅路の陰が舟を染める
二人の少年は何かを確信したように頷き
離れてお互いに見つめ合った
海の男は誇らしげに船首に立ち
静かな声で言った

自分の力で海を飛び越えなさい

少年は勢いをつけて飛翔する
幼い殻を脱ぎ捨てて
舟から舟へ渡るほんの僅かな刹那に
少年は大人になってゆく
長い航海の支度をする男の横顔に

あれは遠い夏の夕暮れだった
海の男は強い
その強さに憧れた
優しさに溺れそうになる時
僕はあの海の男の言葉を思い出す
優しさの本当の意味を




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