FC2ブログ
nature-1204088_640_convert_20200819091137.jpg

何も出来ない
そんな言葉を聞く度に
無力さを誇張して
静観することの罪から逃れようとする
控えめな傲慢さを感じる

何も出来ない
その言葉を口にするのなら
無言でいた方がいい
薄情で怠惰な自分に向き合って
恥を噛みしめる方がいい

何も出来ない
英雄になる必要は無い
小さな市民として
自分が出来る些細な事を探すだけ
愛がすることに優劣はない

何も出来ない
言葉で簡単に済ませてしまう前に
共に生きる自分の役目を知ること
美しい言葉に溺れてしまわないように
向日葵のように前を向くこと

スポンサーサイト



boy-1854107_640_convert_20200814091207.jpg

じいちゃんは毎日コップ一杯の日本酒を飲む
僕は傍に座り戦争の話を聴きたがる
散々に質問されて疲れるとじいちゃんは言った
いくら話しても「お前には解らない」と

闇夜に落ちてくる爆弾の話を聴いた夜も
じいちゃんは言った「お前には解らない」と
天井に出刃包丁を吊してその下で寝てみた
その恐怖が爆弾と同じだったかは知らないけれど

生まれる前から仏壇には兵隊さんの写真があった
セピア色の写真には軍服姿の凜々しい男が写っていた
名前は「太郎さん」といった
じいちゃんの弟だと後から知った

タンスの引き出しにも古いアルバムがあった
男達はしっかりとした顔つきで逞しく見えた
女達は凜としていてその眼は優しかった
なぜこんなにも美しい顔立ちをしているのか不思議に思った

鏡で自分の顔を覗いてみた
戦争を知らない僕がそこには映っていた
悔しかった「お前には解らない」その言葉が耳の奥に響いた
戦地に行けば解るのだろうかと浅はかに思った

あれから大人になったけれど
多分じいちゃんは言うだろう「お前には解らない」と
解らないことの幸せと悔しさを噛みしめて
遠すぎる8月15日を過ごしてきた

戦争を体験した世代はもう少ないのだとテレビが伝える
この国には僕と同じ「解らない子ども達」が溢れている
お盆になると仏壇の写真を見つめていたじいちゃんはもういない
どうか僕に体験を超えるための想像力を与えてください

2020.08.08 蝉の声
grass-455753_640_convert_20200808084739.jpg

当たり前のことが特別なことになった日
過ぎ去ったすべてのことが特別だったと気がついた
そして僕の唇から不平不満が消え去った
心の中で「ありがとう」と呟いてみた
不遇さという衣装を脱いで感謝という衣に着替えると
幸せの数を数えてみたくなった

離ればなれになればなるほど心は近づく
何気ないことに幸せを感じて特別な今日が生まれる
いつか君が言った「人は出会おうとしなければ出会えない」と
笑いながら「偶然だよ」と言い張った僕を君は寂しく見つめていた
噴水の音にかき消されるように言葉だけが入道雲に吸い込まれた夏
当たり前のことが特別なことになった日に思い出す

会わないことと会えないことの違いを知った日に
会えるのに会わなかった日々を後悔した
地上の友も天国の友のように遠く感じて寂しくなった
すべてが特別なのに僕は気づかず時を過ごしていた
会いたいのに会えなくなった今年の夏の空の下
会いに来てくれた蝉たちの声に励まされて今日を生きる

2020.07.10 小さな不親切
hands-1838659_640_convert_20200710090021.jpg

小さな親切は
小さな不親切
手を繋いだ詐欺師の兄弟

自己満足のために
誰かの体験を奪う偽善者
迷う機会を取り上げたら
迷う喜びを知らずに育つだろうに

必要なのは答えではい
共に迷う愛情

欲しいものは与えない
どうすればそれが手に入るのか
慎ましく暗示すればよい
あなたがそれを知っているのなら
小さな不親切を避けられる


小さな不親切は
小さな親切
強面で愛想の悪い兄弟

誰かの体験を黙って見守る
迷うことの苦しみが必要だと知っている
その手で種を蒔くこと
その手で刈り取る喜びが人生なのだと

必要なのは結果ではない
過程を豊かに生きること

答えは教えない
それは麻薬のようなものだから
厳しさは自分の心も痛むもの
あなたがそれを心得ているのなら
小さな不親切は大きな愛になる
2020.06.11 雨の6月に
black-and-white-3525490_640_convert_20200611093658.jpg

自分しか愛せない人間が
他者の振る舞いに白黒付けたがる
都合の悪さを黒く塗り潰した黒い線
目隠しされた模範的な人生を買うために
被害者でも加害者でもない人間が列をなして叫ぶ
自分こそ正しいと思い込んで

他者を計る天秤から自分の傲慢さを引きなさい
同じ天秤でやがて自分も計られる
自分は自分が思うほど正しくも慎ましくもないのだから
ひとつの房に寄り添って咲く紫陽花をご覧なさい
激しい雨を耐え忍び共に生きる豊かさを知りなさい
比べる事の価値は愛の前に挫折するだろう

饒舌である前に寡黙さに宿る優しさを
同じ過ちから逃れられない人間の愚かさを愛する
今日も誰かが自分を赦してくれていることに思いを馳せて
白でも黒でもない真ん中を愛しなさい
心の中の天秤を燃やしてしまいなさい
互いに励まし合いながら手を取って歩く雨の6月に