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2018.10.30 ゴミ袋
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僕はゴミ袋
捨てられるために買われる
何も無い空間が僕の価値
顔はさほど関係ない
口を開けていろんな物を食べる
お腹がはち切れそうになるまで

僕はゴミ袋
愛された記憶は無い
ぶら下げられて揺れながら
放り投げられる痛みに耐える
カラスがお腹を食い破って
卵の殻が飛び出すと少し悲しい

僕はゴミ袋
捨てられる為に生まれてきた
分厚いゴム手袋に掴まれて
暗い鉄の箱に押し込められる
全身から染み出す臭い体液にまみれ
僕は束の間の思い出に浸る

僕はゴミ袋
死ぬ為だけに生まれてきた
やがて業火に焼かれて息絶える
10枚入りの親兄弟も死に絶えた
だけど僕は僕の役目を果たす
誇り高いゴミ袋

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いつか会おうと約束した人たち
その日が来ることもなくこの世を去って行った人たち
会いたいけど会えない安心にも似た寂しさと
もう二度と会えない痛みにも似た寂しさは別のこと
懐かしい笑顔も懐かしい泪に変わってゆく

いつか使おうと捨てられなかった物
その日が来ることなく埃をかぶったまま眠っている
大切だった思い出もいつしか不要品になってゆく
いつかという未来が減るのを数えながら
懐かしい日々は別れも告げずに去ってゆく

今日という日の何気ない日常に
誰か僕を思い出してくれているだろうか
僕は埃だらけであの世に行ってしまってはいないだろうか
減ってゆくいつかという未来の中で
僕があなたにとっての今日でありますように

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僕たちは世界という
終わらない映画を観ている
新しいお客は筋の解らない物語を眺め
古いお客は席を立って出て行く
けれどお客を無視して
世界という映画のテープは回り続ける
始まりさえ誰も知らない物語
そして終わりさえ誰も知らない物語
誰が産まれようが
誰が死のうが
お構いなしに映し出される奇妙な映像
人生は途中で始まり途中で終わる映画鑑賞
笑顔の後には泪がこぼれ
愛が始まり愛は終わる
若者は老人となり
誕生は瞬く間に死に変わる
毎日が映画を観ているような気分で過ごす
大根役者と派手な原色の品の無さにうんざりしながら
時には褒め称え
時には悪態をつきながら
自分の帰る時間が来るまで席に座っている
係員が時間切れだと肩を叩くまで
暢気に座っていられると思った次の瞬間
肩を叩く冷たい手に気づく
少し名残惜しそうな気もするし
清々したような気分にもなる
けれど映画は続く
誰が産まれて
誰が死のうがお構いなしに
席に座っている者は考え続ける
この映画にどんな意味があるのかと
でも答えは永遠に分からない
人生は山盛りのポップコーン
時間がたてば喜びは憂鬱に変わってゆく
思い出は床に落ちたポップコーン
あなたがいたような形跡だけを残す
時が来れば掃除夫がやってきて
それさえも跡形も無く消え去る
だからあなたには石が必要なのだろう
名前ではない名前が彫られた四角い石が
だけど通りの角の映画館は年中無休
何千年も何万年も開店している
誰にも理解できない映画を上映している
何の意味も無いのに意味を考え続けるお客と共に
だから席を立つ時間が来る前にキスをしよう
映画館の暗くて深い椅子に隠れて
係員に見つかるまで抱き合おう
世界という映画は勝手に回っているだけ
誰が産まれようが
誰が死のが
お構いなしにフィルムは動いている
その中に生きている人は誰もいない
細切れの嘘が連写されているだけ
産まれるとは映画館のドアを開けること
死とは映画館のドアを出て行くこと
世界とは終わらない無意味な映画
だからつまらない映画は観ない
時間が来るまで映画館でキスをしよう

2018.09.05
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私に似合う翼をください
大きすぎたり
小さすぎたりしない
丁度いい翼をください
金の翼も
銀の翼もいりませんから
白い翼をください
線のない自由な空をください

私に似合う翼をください
重すぎたり
軽すぎたりしない
丁度いい翼をください
未来の翼も
過去の翼もいりませんから
今という翼をください
壁のない自由な空をください

私に似合う翼をください
あなたのでも
誰かのでもない
私だけの翼をください
優秀な翼も
特別な翼もいりませんから
等身大の翼をください
迷う自由のある空をください

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叔父さんにお小遣いをねだりなさい
義理の叔母は薄笑いを浮かべて小学生の僕に云った
僕は彼女のショーに見世物として呼ばれたのだった
貧乏な親戚を小馬鹿にしている彼女がなぜ僕を呼んだのか
それはすべて優越感というショーの為だと知った
観劇するのは見覚えのない親戚とその子どもたち

僕がそれを断ると叔母はしつこく迫った
叔父さんにお小遣いを頂戴と云いなさい
僕は叔父の前に歩み出て叔母を振り返った
人を蔑む残酷で嫌らしい視線が僕を貫いている
叔母は顎で合図して僕を急かしている

叔父さんお小遣いをください
その瞬間にそこにいた全員が静まりかえった
そして次の瞬間には大笑いが起こった
叔父さんは財布から誇らしげに1万円を出す
ありがとうございますと僕はうなだれた

うなだれた僕の耳に叔母の笑い声が響いた
叔母は満足そうに薄ら笑いを浮かべて僕を見ている
僕は惨めで貧乏な道化の子どもだった
彼女はショーを終えた僕に今度は帰れと云った
僕は1万円札を握りしめて親戚の劇場を出た

夏の入道雲を見上げてため息をついた
油蝉の鳴く声と蔑みの笑い声が路上に漂っている
哀れな道化のショーのギャラを手にして歩いた
この世の全てのものが憎かった
それが小学生だった僕の悔しい夏の思い出だ