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真夏の暑い日には電柱の日陰で眠り
冬の寒い日には車の下で寝ていた兄弟猫
いつの間にか兄は去り一匹になってしまった白黒の猫
先日の台風で雨風に打たれ雑巾のようになってしまった彼を見た
気の良い老婆が差し出す餌を玄関の前で待ち
前足で戸口に催促をする姿を見ながら辛くなった

そして彼もまた静かに去った
暑くも寒くもない天国へと旅だったのだろう
それから一週間が経っても彼のお椀は玄関の横にあった
彼が毎日そこで餌を食べていた頃そのままに
そして今日は玄関の前の彼のお椀は片付けられていた
背中を丸めて餌を頬張る彼はもういない

夏と共に彼は去った
ふと横を通り過ぎる兄弟猫の気配を感じた
しかし振り返ってもそこに彼らはいなかった
彼らが暮らした懐かしい路地には彼らの魂だけが遊んでいる
兄弟仲良く寄り添って道の真ん中に寝ていた白黒の猫
慎ましく生きた兄弟猫の一生を僕はそっと心に刻んだ

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2019.08.15 8月に詫びて
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ヒロシマに原爆が投下された日
テレビで特集番組を観た
その夜に僕はステーキを食って酒を飲んだ
被爆者が泪で訴えた風化という言葉が頭をよぎった
そしてあまりに鈍感な自分に苦笑した

長崎に原爆が投下された日
山の上から青空と白い雲を見ていた
手を合わせることもなく2日間が過ぎ
風呂に入っている最中に長崎のことを思い出した
そしてあまりに無頓着な自分にため息を付いた

8月15日の終戦記念日
午前11時5分までそれを忘れていた
昼は何を食おうかと思いを巡らせていた
知らない戦争への実感の無さと平和ボケした今日
そしてあまりに軽薄な自分に驚いた

何を見ても何を聞いても
まるで他人事のように思えてしまう心の貧しさ
誰が泣いていうようと苦しんでいようと
僕の唯一の興味は自分自身の事でしかない薄情さ
8月は自分の愛情の足りなさに詫びる日だ

2019.07.19 執行猶予
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未来の自分に準備しなければならない
外見の美しさが去った後に残る何かを
未熟な可愛らしさが免罪符を与えている間に
準備しなければならない
年老いて自信をなくしてしまう前に

執行猶予はそんなに長くないから
準備しなければならない
若さも美しさもやがて手放さなければならないことを
知っておかなければならない
空っぽの自分に気づいてしまう前に

鏡の前で白髪を見つめ皺を数えるのなら
自分に残っている不変の美しさも数えなさい
いま何に時間と金を費やすべきなのか
若さにすがり付くのを止めれば
老いることはそんなに悪くないと思える

2019.07.15 君と君たちと
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人と人はいつでも一対一
それが十把一絡げになったとき
傲慢さが生まれ誤解が生じる
僕と君はいつしか
僕と君たちになり
顔のない存在になる
そうならないように
僕は君の顔を見つめる
君の心にかけがえのない生命を見いだす

僕は君の君たちだろうか
それとも君だろうか
その他というシールは貼られていないだろうか
時々不安になる
君が君のままでいられる時間を
僕が僕のままでいられる時間を
昔話すら出来ない友もいる
天国はあまりに近くて遠いから

僕は海で桜貝を拾う君の横顔を忘れない
僕は君の拳が叩いた頬の痛みを忘れない
君はいつまでも君たちではない
十把一絡げではない人と人
真っ直ぐにその顔を見つめて
僕は自分の傲慢さを隠していたい
愛情の足りない僕の為に
この世でたったひとりの君の為に
僕は君の名前を故郷の空に叫ぶ

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誰の人生にもいる
自分の嘘を真実にしてくれた人が
だまされた振りをして
優しく微笑んでくれた人が

誰の人生にもいる
嘘を詫びなければならない人が
大人になる苦さを
黙って教えてくれた人が

誰の人生にもいる
若い頃の自分と似た人が
どんな見え透いた嘘も
そっと赦してあげたい人が

誰の人生にもいる
自分を奮い立たせてくれる人が
嘘を真実にしてくれた
その愛情に応えなければならない人が