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僕は少し苛立ちながら
君たちが来るのを待っている
不安になればなるほど君たちは来ない
やがて遠くにうずくまる影を見る
だけどまだ君たちは近寄ってこない

僕が近づけば消えそうだから
黙ったまま静かに座っている
無邪気にそばに寄ってくる小鳥のように
気がつけば君たちは踊り始める
だけどまだ手を伸ばして握手はできない

僕の肩を叩く手に気づく
顔を上げると君たちは傍で笑っている
手を取って僕は踊り始める
ほんの束の間の時間を惜しむように
こうして僕はようやく物語を書き始める

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2017.07.03 寂しがり屋
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私はここにいるよ
行き過ぎる人の心の中から
そんな声が聞こえてくる
出会えば別れることを知りながら
それでも肩を寄せ合って
喜びと哀しみにかき混ぜられて
一粒の雨だれが共に海で遊ぶ
僕たちはみんな寂しがり屋だから

私に気づいて欲しい
彼方を見つめる人の心から
そんな声が聞こえてくる
生まれれば死ぬことを知りながら
それでも刹那に抱きしめ合って
期待と裏切りに織り交ぜられて
健気な雨だれが共に夏を過ごす
僕たちはみんな寂しがり屋だから

私に触れてください
首までボタンを掛けた人の心から
そんな言葉が聞こえてくる
寄せる波もやがて去ることを知りながら
それでも愛さずにはいられない
今日という日の過去に翻弄されて
小さな雨だれが頬を伝って落ちる
僕たちはみんな寂しがり屋だから

2017.06.13 365日目の波
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365日目の拍手は過ぎ去って
僕はまたゼロに戻ってゆく
少し肌寒い砂浜にひとり立って
誰かがそこにやって来るのを待っている
次の波が無邪気さを洗い流すまで
僕は夢中で物語を書き続ける

365日目の喝采は過ぎ去って
僕はまた振り出しに戻る
透明な過去の重荷を背負ったまま
誰かが肩を叩いてくれる日を待っている
次の波が愛しい日々を洗い流すまで
僕はひたすら物語を書き続ける

365日目の拍手と喝采は過ぎ去って
心の奥にそれは刻まれる
静かにそして潔く別れゆく日々の面影
小さな形見も残さずに足音だけを響かせて
次の波が何もかもを洗い流すまで
僕は黙って君の手を握り続ける

2017.05.22 蛍と恋
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蛍を見ると思い出す
ふるさとの小川で捕まえたあの夜のことを
虫籠を抱いて蚊帳の中に潜り込み
いつまでも蛍が光るのを見ていた夜のことを

蛍を見ると思い出す
光を失った蛍たちの無惨な朝の死を
幼心がしでかした惨さと
喜びが虚しさに変わった死のある朝の風景を

蛍を見ると思い出す
ふるさとの小川で語り合ったあの娘の横顔を
恋人という籠に閉じこめたら
消えてしまった僕の恋心と泣いたあの娘の横顔を

蛍を見ると思い出す
無惨に死に絶えた蛍と儚く醒めてしまった恋を
大切なものはそっとしておけ
捕まえなければ蛍は永遠に飛び交い恋は終わらない

2017.05.01 永久の花
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落ちこぼれて笑われて
正直に生きて馬鹿を見る
そんな自分に出会ったら云ってやれ
迷うことなく美しく生きろと
綺麗に生きて現在に死ぬよりも
ただ美しくあれと
誰も見ないところで花となれ
永久に褪せない花となれ

座る椅子もなく飢えて渇く
取り残されて途方に暮れる
そんな自分に出会ったら云ってやれ
躊躇うことなく美しく生きろと
狡くなって現在に死ぬよりも
ただ美しくあれと
誰も褒めないところで花となれ
永久に誇り高い花となれ

理不尽さの前にしなだれて
競争に負けて心が折れる
そんな自分に出会ったら云ってやれ
誰よりも美しく生きろと
嘘で誤魔化して現在に死ぬよりも
ただ美しくあれと
誰も語らないところで花となれ
永久に散らない花となれ