2017.03.21 相棒
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相棒を棄てに行く後ろめたさを抱えながら
雑巾で丁寧にカラダを洗ってやった
別れの盃に1リットルのガソリンを飲ませ
ありがとう言ってみた
するとお前は静かにそして寂しそうに
さようならと笑った

長く使い込んだ物には魂が宿るという
そんな言葉を思い出していた
11年間で42000キロを共に走った相棒
雨の日も風の日も雪の日も文句も言わずに
日々のフルスロットルに耐えた心臓
少しばかり大食いの胃袋

薄っぺらな委任状に署名をすると
おいらはまだ走れるぜ
そう語るお前の声に心が痛んだ
お前は外国に行くのだとオヤジが言う
アフリカへ行くのだと
そしてその話に少し心が救われた気がした

お前は異国の顔も知らない誰かの所に嫁に行く
風を切って心臓が止まるまで走り続ける
花嫁の父のような気分で店を出ると
茜色の空がまだ見たこともないアフリカの夕陽に見えた
長く使い込んだ物には魂が宿るという
僕もここで心臓が止まるまで走り続けるだろう

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友は何処から生まれるか
それは入学式で肩を並べたあの日から

友は何処から生まれるか
それは笑い合う声の名残から

友は何処から生まれるか
それは繋ぎ合った手の温かさから

友は何処から生まれるか
それは殴り合った拳の痛みから

友は何処から生まれるか
それは語り合った夜明けの静寂から

友は何処から生まれるか
それは別れ道で交わした握手から

友は何処から生まれるか
それは互いに選んだ道の戻れぬ日々から

友は何処から生まれるか
それは互いに背負う運命の重さから

友は何処から生まれるか
それは昔話の溢れ出る胸の奥から

友は何処から生まれるか
それは輝く思い出の破片から

友は何処から生まれるか
それは限りある生命の刹那から

友は何処から生まれるか
旅路の果ての遠い場所から

友は何処から生まれるか
それは遠いふるさとの青い海から

2017.03.07 天国への手紙
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元気でもなく 生きてもいない 天国にいるKへ

俺は田舎から電話が来ると今でもドキリとするんだよ
1度目は同級生がトラックの荷台から転落して死んだって電話

2度目はKよ お前が車の中で死んでいたって電話だよ
Kよ 親友なのに葬式に出られなくて悪かったな
俺は昔から薄情な男なんだ 知っているだろう

それから 3度目はお婆ちゃんが死んだって電話だったよ
親代わりのお婆ちゃんだったから
義理を果たすために慌てて田舎に帰ったよ
その時お前の嫁さんのMに会ったんだ
仏壇に線香をあげてお前の写真を見たよ
しばらく会わないうちに白髪が増えたお前を見て
妙に泣けてきたのを覚えているよ
そう言えばMと別れるときに母親に写真を撮ってもらったんだ
Mは嬉しそうに「この人はKの親友で有名人なんだよ」ってはしゃいで
だから「もっと有名になる前に写真を撮ってよ!」って笑った
俺は有名人じゃないけど
田舎では一番の変わり者だったから否定はしなかったけどね
そして もっと有名にはならずにいるよ

それから1年して 4度目の電話が鳴った
お前の嫁さんのMが死んだって電話だったよ
でもMの葬式にも俺は行けなかったんだ
だから 代わりに詩を書いて贈ったよ
Mの棺桶の前で仲間の誰かが読んでくれたと後で聞いて泪が出たよ
学生時代から恋人同士だったKとM
誰よりも早く結婚しちまったKとM
その結婚式で俺が唄った歌を今でも覚えているよ
でもあれ以来 もうその歌は唄わないことにしたんだ
嬉しそうに寄り添ったお前らを思い出すからな

そんな感じだから 田舎から電話が来るとドキリとするんだ
たまに電話があると「また誰か死んだな」って思うようになっちまった

まあ あれから10年 
俺はお前には来なかった歳月を生きたよ
強気で生きてきたんだけどたまには弱気にもなる
そんな時はいつもお前が出てくる
そして「生きている奴が、文句言うんじゃねえよ!」ってお前が言うんだ
すると俺は「死んだ奴が説教するんじゃねえよ!」って笑う
そうすると不思議に力が湧いてくる
真っ正直に そして時には 自分を誤魔化して生きた10年だったよ
そして 電車の中で一列に座って全員がスマホを見ている時代に辟易し
世界を旅しては飲んだくれて 憂さ晴らしをしてきたよ
日中は独りで毎日のように池の畔で釣りをして
日が暮れればまた酒を飲む 来る日も来る日も酒を飲む
普段は誰にも会わず 話しもしない

今年で10年が過ぎたけど
お前も嫁さんのMも俺には前より近く感じるんだ
俺が長い間 田舎を留守にしてお前らと話せなかった分
俺はこの10年で釣りをしながら 酒を飲みながら
お前らとたくさん話しをしたような気になってる
お前にはやってこなかったこの10年の
自慢話や愚痴を話したような気になっている

でも天国に手紙を書くのは初めてだ
いや もしかするとそこは地獄かな
いずれにしろ俺もいずれはそこに行くんだろうな

その前に 今夜は新しい焼酎を買ってきたから
KとMと俺と仲間たちが写っている写真をテーブルに飾って
みんなで一杯やろうじゃないか

3月に桜の咲くのも待たずに逝ったK
俺の写真は入れずに送るよ
今じゃお前よりも白髪が増えたからな

永遠に歳を取らないお前らと

どんどん歳をとってゆく俺にも

もうすぐ また春が巡って来るよ      S.Y

2017.03.02 仮面舞踏会
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僕も君も仮面を外してはいけない
他人の素顔なんて誰も興味がないから
例え僕がどんなに冷たい人間であろうと
君の前で僕は優しく慈悲深い人間を演じられる
例え君がどんなに薄情な人間であろうと
僕の前で君は慈しみ深く温かい人間を演じられる
仮面の下に見るに耐えない素顔があっても
優しい表情の仮面が全てを真実にしてくれる
事実である必要はない
ただお互いにそう見えればいい
僕は君に決して素顔を見せないと誓う
だから君も決して素顔をみせないで欲しい
そうすれば舞踏会は終わることがない
こうして僕と君は永遠に踊り続ける
何も知りたくない二人が手を取り合って
仮初めの今日に踊る
やがて灰になるその日まで踊り続ける

僕も君も正体を現してはいけない
他人の本性なんて誰も興味がないから
例え僕がどんなに不器用だとしても
君の顔を見て僕は目をそらさずに嘘をつける
例え君がどんなに臆病者でも
僕の前で君は真摯で誠実な口調で嘘をつける
心の中に聞くに耐えない言葉が渦を巻いていても
柔らかな表情の仮面が全てを真実にしてくれる
本当である必要はない
ただお互いにそう感じればいい
僕は君に決して本性を見せることはない
だから君も決して本性をみせないで欲しい
そうすれば舞踏会は終わることがない
僕と君は永遠に踊り続ける
何も真実ではない二人が指を絡めて
空虚な今日に踊る
やがて塵になるその日まで踊り続ける
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森の中を抜けて愛しい人に会いに行く
誰にも見つからないように
少し顔に皺が増えたのは
愛しい人といっぱい笑ったから
少し膝が痛むのは
愛しい人をいっぱい抱き上げたから
春の花が咲く頃にはそれを摘んで
通草の実る頃にはそれを見上げて
僕は君に会いに行く
道のない森の中をコンパスも持たずに
ただ君の顔を思い浮かべながら
道なき道を踏みしめて

森の中を抜けて愛しい人に会いに行く
誰も知らない二人だけの家に
少し髪が白くなったのは
愛しい人といっぱい過ごしたから
少し肩が痛むのは
愛しい人をいっぱい抱き寄せたから
夏草の生い茂る頃にはかき分けて
雪の降る頃には寒さに凍えながら
僕は君に会いに行く
愛しさが踏みしめた季節を抱えて
ただ君に会いたくて歩いた森を
いつしか出来たこの道を