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君は売られてゆく
社会という名の遊郭に
生涯奉公の戻れぬ道を辿って

可愛らしい提灯が揺れる
花街の路地に赤い着物を着た
君の下駄の音が響いている

カラン コロンと悲しげに
カララン コロロンと唄を口ずさんで
カンカラ コロコロ戸口が開く

自由を捨てたら
明日の糧には困らない
だけど心は疵だらけ

君を売ったのは
女衒の悪党親父ではなく
君自身だったんだよ

カラン コロンと名残惜しく
カララン コロロンと後ろ髪を引かれて
カンカラ コロコロ格子の向こうに

君は何処を見つめている
美しく塗られた白い顔に
赤い紅が毒のよう

社会に並べられて
君は誰に買われてゆくのやら
値踏みされたあどけない黒い瞳

カラン コロンと罪悪感は消え
カララン コロロンと玄人になって
カンカラ コロコロ僕を忘れる

僕は君を忘れない
無邪気で自由な長い髪を
風の形の髪留めを

君は僕を忘れるがいい
僕のような愚かな自由人を
社会という名の遊郭で

カラン コロンと思い出ばかり
カララン コロロンと走馬灯のように
カンカラ コロコロ夏は巡る

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終戦記念日になると
何故だか誰かに
詫びねばならない気がする

それは僕自身が
さほど価値があるとは思えない
怠惰な人生を生きてきたからだろうか

顔も知らない子孫のために
命懸けでお国を守ってくださった英霊にも
詫びねばならないような

共に暮らすことの叶わない僕を
命懸けで生んでくださった母にも
詫びねばならないような

報いるものひとつ無き無作法な人間として


終戦記念日になると
何故だか生きていることさえ
肩身が狭くて居たたまれない

こんなお前のために
私たちは命を懸けたのではない
そんな痛烈な叫びが心を揺らしに来る

いつか家族と共にと残しておいた缶詰と酒
それも叶わず出撃してゆく若者の遺書に
肩身が狭くて居たたまれない

会える機会があったのに拒絶した
寂しい顔をした母の後ろ姿に
肩身が狭くて居たたまれない

報いるものひとつ無き厚顔無恥な人間として

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夏の日のスーパーマーケット
女房が並んでいるレジに旦那が早足で駆け寄る
その手には6缶パックのビールを持って
カートのカゴにそれを入れた瞬間に女房は言い放った
「それいらないから!」
旦那は小さく答えた
「えっ?」
女房は冷たく判決を言い渡す
「じゃあ、別に買って!」
そして旦那は小さく頷いた
「うん」と
「別に買う」とは食費とは別にビールを買えということだろうか
旦那にしか関係の無いものは旦那の小遣いで
僕は振り返って旦那の顔を見た
気弱そうなポロシャツが色褪せて見えた

それから女房はパート先の愚痴を語り出した
旦那は何度も頷いてその話を聴いている
冷蔵庫から出されたビールが次第に汗をかく
女房は愚痴を続ける
だけど旦那は頷き続ける
「そんな話は聴きたくない!」
などと言うこともなく笑顔で聴いている
「別の人に話せ!」
などと冷たくあしらうこともなく聴き続けている
女房にしか関係の無いパート先の愚痴
僕はまた振り返って今度は女房の顔を見た
それから夫婦の顔を見直した
男女平等で幸せな夫婦の日常に苦笑いして
僕は自分のカゴの中の豆もやしを見つめた
スーパーマーケットの外には夏の空が広がっている
耳の奥には「別に買って!」という声だけが残った
暮らしという現実の前に思いやりはひれ伏す
そんな言葉が心に浮かんで消えた
だけどそれは冷えすぎた冷房のせいだったのかも知れない
夏の日のスーパーマーケットは寒かった

2021.07.23 裁きの日
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凶暴な悪人を裁くのが
凶暴な善人であってはならない

残酷な悪人を裁くのが
残酷な善人であってはならない

浅はかな悪人を裁くのが
浅はかな善人であってはならない

反省無き悪人を裁くのが
反省無き善人であってはならない

更生しない悪人を裁くのが
更生しない善人であってはならない

恥知らずの悪人を裁くのが
恥知らずの善人であってはならない

愚かな悪人を裁くのが
愚かな善人であってはならない

後ろめたい悪人を裁くのが
後ろめたい善人であってはならない

嘘だらけの悪人を裁くのが
嘘だらけの善人であってはならない

晒された罪で悪人を裁くのが
隠された罪を持つ善人であってはならない

無慈悲な悪人を裁くのが
無慈悲な善人であってはならない

この世の悪人はみな愛によって裁かれよ
この世の善人もやがて愛によって裁かれる

2021.07.22 待ち人
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世の中は僕を待ちはしない
立ち止まりもせず
振り向きもせず
笑いながら遠ざかる後ろ姿
冷たく去って行く足音を恨んだ
もしも誰かが僕を待ってくれたなら
人生は何か変わっただろうか
おいてきぼりの孤独を味わい
重い足取りで歩く湿地帯

世の中は君を待ちはしない
立ち止まることもなく
振り向くこともしない
僕は置いていかれた人間だから知っている
背中に響く君の震える声を
あの日の僕のような君を
僕だけは待っていてあげよう
君を抱き上げる力は無いけど
遅れてくる君を振り返って

世の中は誰のことも待ちはしない
遅れないことに必死すぎるから
立ち止まると恐怖が込み上げてくるから
置き去りになった人のことなど思いもせずに
誰もが自慢話に夢中になっている
その背中を泥の中で見つめる瞳がある
空気にすがり付く手が力無く落ちる
誰もが優しさを忘れたとき
この世でただひとりの待つ人になりなさい